東樹 康雅(とうじゅ やすまさ)さんにインタビュー【2019.4.3】
認定NPO法人藤沢市民活動推進機構が運営する藤沢市市民活動推進センター センター長
高校時代を過ごしたアメリカ南部のテネシー州で人種差別を目の当たりにし、多文化共生について考えるようになる。大学にて社会福祉を学びながら、ベトナム、ミャンマーで教育支援を行うNGO活動に携わったことをきっかけに、NPOを支援する仕事に就く。
【社会を知るためのワカモノ✕NPOインターンシッププログラムとは具体的にはどのようなものなのですか?】
高校生、大学生と地域のNPO、市民活動団体をつなぐプログラムで2014年から実施して5回目が終了しました。
具体的には、半年間で120〜200時間、団体の一員として活動し、若者の興味の幅が広がるような、また団体側には若者と関わることで新しい視点が生まれるようなことを願って取り組んでいます。
若者の成長ってすぐに結果は出ないと思っているんですが、実際、プログラムを運営してきて、半年間でも変わるんだと実感しています。スポンジのように吸収できる若者の成長が感じられるんですよね。
【学校側の授業プログラムで行っているボランティア活動とは違って、学生自らが行動して主体的に活動するというところに意味がありますよね。どのようにして生徒を集めているんですか?】
「社会を知るための」というタイトルにある通り、職業体験とは異なるインターンシッププログラムであるということに共感いただいたり、もしくはこれまでの生徒や学生の変化を間近で見てきている先生とのつながりからですね。その先生方より、大学や高校の授業の中で、「NPOとは何か?」などの講義に加えて説明会をさせていただくなどして参加者を募集しています。
学生たちが実のある体験ができるように、受入れ側の団体支援にも力を入れています。団体によっては、学生を労働者の一人として受け入れたいと考えているところもあるのですが、学生が自ら考えて行動していくことを一緒に取り組んでいくという理解があるというところを重要視しています。
私自身、プライベートではPTA活動をする中で、とても恵まれた仲間たちと出会えて幸せだなと実感しているんですが、同じ目的に向かって活動するのに相性はとても大切ですよね。「何をやるか」よりも「誰とやるか」ということの方が大切だなと感じています。それにはマッチングがとても重要で、学生ひとりひとりと個別に面談をしてどんな想い持っているのかを聞いて、参加する団体を紹介していくようにしています。
昨年参加してくれたある学生が、最初は国際関係に関わりたいと言っていました。私は、海外での活動も大切だけど、自分の住む地域にも目を向けて比較対象を持つことも大切だよ、ということを伝えました。やりたいことは自ら選んでいけると思うんですが、違う活動をすることによって、知見が広がると考えています。
これまでプログラムに参加してくれた学生が、就職してもイベントに来てくれたりするのがとても嬉しいですね。
【そんな風に集まってくれる人たちのモチベーションは何だと思いますか?】
やっぱり、「楽しかった経験」が一番大きいですかね。自分の中で達成感が得られたとか、この人と出逢って良かったとか、またこの人と会いたいとか、そういう経験を後輩に伝えたいと思ってくれているのかなと感じています。
【それって、すごい成長ですよね。】
はい。支援センターは帰れる場所としてありたいですね。実家的な。笑
【いつでも安心して相談できる場所ですね。若い時に、大人と活動すると視野が広がりますし、将来、仕事を選ぶ時の選択肢が広がりますよね。】
そうですね。そこが面白いところでもあり、責任を感じる部分でもありますね。
影響を受けやすい年齢の場合、見方が凝り固まらないようにしていきます。例えば、定例会を開いて、ひとつの団体の考え方に染まるのでなく、違う団体の考え方にも触れるような機会を提供していくようにします。戸惑い、悩み、考える時間を持つことは大切にしたいんですよね。
「ハッとする瞬間」が大切なんですよ。
私も、学生時代にNPOをしていた時に社会人の先輩から、「『実相』という言葉を知っているか? 東樹が今取り組んでいることは本当に当事者のためになっているのか」と聞かれて、ハッとした経験があるんです。
【ちなみに、東樹さんは学生時代どんな活動をされていらしたんですか?】
東南アジアでの教育支援をするNGO「JUNKO Association」にて活動をしていました。
大学で東南アジア経済について研究していた故高橋淳子さんという学生が「ベトナムの貧しい子どもたちのために何か役に立ちたい」という強い想いを持って帰国されたんですが、その数カ月後に不慮の事故で亡くなられてしまったんです。彼女の想いを継いだゼミの仲間、顧問の先生、ご両親らが資金を出したり、寄付を募ったりして1995年にベトナム中部にある村の小学校を改築したことが活動の始まりなんです。
2007年に任意団体からNPO法人化する際、私はNPOを支援することを生業にしていたため、監事として関わり、20代後半で理事になりました。
【東樹さんは教育支援にずっと関わっていらっしゃるんですね。】
広い意味での教育に携わらせていただいているかもしれません。そもそものきっかけは中学の頃に公立中学校でしたが、行政のプログラムで2週間、米国でホームステイした経験や高校時代に米国で過ごしたことです。そこでの経験がもとで国際関係の仕事をしてみたいという想いがありました。
先ほども申し上げた通り、『実相を見る』という言葉をNGOの先輩から教えてもらいました。本質を見極めることが大切だという意味です。ベトナムで学生主体のNGOの一員として活動していた際に、支援者として自己満足で終わってないか、それは誰のためか、何のために行うのかということを、メンバーとみんなで話し合うなど、常に考えるようになりました。
NPOの活動は少数精鋭で行っていることもあり、関われる範囲が広いんですよね。企画、実行、振り返りという一連の流れに最初から最後まで関わることができます。またNPO関係者には様々な人生経験をしている方や、その団体に関わる多くの人と出会う機会が得られるところも魅力のひとつです。インターンシッププログラムに参加する団体担当者は、失敗して学ぶことが大事だよ、と受け止めてくれたりするので、まずは行動を起こしていろいろと経験することができるんです。社会課題についてあまり固く考えるのではなくて、自分の将来と重ね合わせて、いろいろな角度から学んでいってもらえたらと思っています。
【何かやりたいという想いを持ち続けて、タイミングが来た時に、行動に起こせるようにしておくことって大切ですよね】
そう思いますね。やりたいことをすぐに仕事にしなくてもいいんじゃないかなと思いますね。旅に出てもいいし、地域活動をしてもいいし。
【お話しを伺って、運営する側の想いがすごく伝わってきました。そんな東樹さんがこれからやっていきたいことは何かありますか?】
趣味が木登りなので、自然の中でずっと過ごしていきたいんです。究極は自給自足の暮らしですが、せめて地産地消のできる暮らし方を目指していきたいですね。
私自身は、鎌倉に移住してきて8年になるんですが、毎週日曜日に、800年前からある田んぼの手入れをしたり、湿地復元のための作業を行うなど里山保全の活動をしています。
今はライスワークとライフワークのバランスが悩ましいところですね。笑
インタビュアー: マリコ
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