心から興味の持てることに出会えるように

石橋 智晴(いしばし ともはる)さんにインタビュー【2019.7.29】
 大学院でキャリア教育学の実践研究をし、現在は公立小学校教諭として6年生の担任をしている。
 学生時代に立ち上げたNPO法人 EN Lab.(エンラボ)の理事として全国各地の企業や団体でまちづくり、組織開発、教育分野を中心にグラフィッカー、ファシリテーターとして活動も行っている。
【ファシリテーターに興味を持たれたきっかけは何ですか?】

 大学では、ダイビングサークルに所属していて、先輩に「海外に行くから代表を代わりにやってくれないか」と頼まれたんです。代表になってサークル内での話し合いがあまり良いものではないなって感じていた時に、ゼミでファシリテーションに出会ったんです。学びたいことに名前が付いている!
って衝撃を受けました。

 ファシリテーションの一部(NLPなど)は、1960〜70年代にアメリカでベトナム戦争へ行って傷ついた兵士の心を癒すために始まったと言われています。その頃のファシリテーターとは、傷ついた人が未来に向かって進んでいけるように、共に歩んでいける人のことです。

 相手のことを理解したり、受け入れたりする力やスキルが必要で、そのためには、ファシリテーターである人が自分自身を受け止められる状態にないと、ただ話しを聞いているだけになってしまう。そうならないためには、自分自身について深い認識を得ていて、その上で相手との関係を高められるスキルを持つことが必要です。



【カウンセラーですね。】

 そうですね。臨床心理学に、グループとして必要な組織心理学が混ざりながらファシリテーションの一部は確立されていきました。

 ファシリテーターとは環境やプロセスを作ることに責任を持つ役割の人を指します。

 80年代になって体系化されてきて、日本には90年代にまちづくりの文脈で入ってきたと言われています。



【石橋さんは、グラフィックやファシリテーションをどのように学ばれてきたんですか?】

 学生の時に、まちづくりの現場に出て、ファシリテーターにお願いして独学でグラフィックレコーディングをやり始めました。大学のある京都はもともと、町人文化でコミュニティがしっかりしている地域なのでまちづくりが盛んなんです。

 グラフィックファシリテーションは、自分たちのやりたいことやビジョンを可視化して、参加者のイメージを共有していくものです。その人の中にあるイメージや可能性を表現できるのであれば、絵でも文字でも身体表現でも何でもいいんです。



【行動力がありますね。大学生の時にNPOを立ち上げられたんですよね。】

 ただ、やりたいことをやっているという感覚なんです。3年生の時に、同じゼミの友人とエンラボをつくり、ゼミの先生に代表をお願いしました。4年生の時にNPOとして法人化して、行政などから委託を受けて活動を始めました。

 僕はファシリテーションを学びたい。友人はまちづくり×教育の実践的な場が欲しい。先生はミャンマーの教育の質を上げていきたい。それぞれやりたいことは少し異なったんですが、それぞれがそれぞれにできることをやってみるってところが始まりです。

    団体のビジョン【教育✕ワークショップ】の目指すところは、子どもたちや先生方が自らエネルギーをもって何かやりたい、こうしたいという思いから行動を起こしていけるようにすることをバックアップすることです。



【まさに、ファシリテーターの役割ですね。】

 そうですね。そのためにワークショップという形をとっています。参加するそれぞれがやりたいことを行動に起こさないと進んでいかないんです。自ら進めていくプロセスの中でいろいろと学んでいって欲しいと思っています。

【ワクワクしてモヤモヤする】というのが、僕らがワークショップの中で大事にしていることなんです。その中で自分の中に「問い」が生まれ、それが自分自身をエンパワーメントするというか、一つの原動力となって学び続ける力が生まれるんですよね。

 ダンボールを作っている会社の方に協力してもらって、子どもたちが校庭でダンボールのモニュメントを作るワークショップを行ったことがあるんです。
「どうやったらこれを上に乗せられるのかな」とか考え出して、ひとりひとり個別にやっていたけれど、結局、周りの子に声をかけて「ちょっと手伝ってよ」とか、「こことここをつなげたら面白んじゃない」とか話しをしながら「できないからどうしたらいいんだろう?」と考え始めるんです。そういったことが大事だなと思うんです。

 ファシリテーターには大きく分けると「調整型」と「生成型」というのがあります。
「調整型」というのは、会議やグループワークの進行とか、みなさんが発言できるようにバランスをとる役割をします。「生成型」というのは、自分たちの中から生まれてくるものを一緒に形にしていく。生まれ出てくるまでのプロセスを作らなければならない。そして自分たちで解決方法まで出せるようにしていきます。



【先生として感じていることがあったら聞かせてください。】

  フィンランドやデンマークでは20年くらい前に改革がおきて、公教育でもプロジェクト型、生成型の授業が行われています。

 日本でも、2020年の大学入試改革を封切りに、学び続ける力や人間性を育てるのが教育の本流になってきます。従来型の講義形式ではなくて、協働する力を身につけながら学んでいくという流れになってきています。

 僕は、自分がこれまで学んできたことが日本の学校に合う形で取り入れられないか試行錯誤を繰り返しながら取り組んでいます。そうすることで、周りの先生方や子どもたちにもNPOでやってきたスタイルの学びの形が少しずつ受け入れられるようになってきました。



【具体的にはどのようにされているんですか?】

 子どもたちとは対話をしていくことを心がけながら、先生として教える、伝えることはしていくようにしています。

 マインドセットという考え方の癖のチェックをすると、多くの人は「自分の能力は生まれ持ったものだから変わらない」と思い込んでいますが、「時間をかけてがんばって努力すれば変えられる」と思っている人もいます。
 今年は、成長的なマインドセットになれるように授業の中でワークショップを行ったり、クラスのビジョンをLEGOで作成したりしました。

 僕が大学生の時に、ファシリテーションに出会ったように、子どもたちや先生もいつか必ず自分が心から興味の持てるものと出会えると思っています。でもそれは、自分から経験をしようと踏み出すことがないと生まれない。
 その一歩を踏み出せるようなモチベーションを持たせることこそ公教育の中でできることだと思っていて、そのモチベーションが生まれるきっかけづくりが僕のやりたいことです。



【今後のビジョンなどがあったらお聞かせください。】

    今後は、先生たちのモチベーションを高められるような、働きやすい環境もつくっていきたいです。民間企業でマネジメントの経験を積んで、公立の校長になって環境を整えたいと考えています。

 働いていて楽しいと思う先生が増えていったらいいなと思っています。先生たちが生き生きすると、子どもたちが生き生きすると感じるので、笑顔が伝播していくような場作りをしていきたいですね。

インタビュアー: マリコ

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